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時給980円の工場バイトで生を繋ぐ60歳の悲哀

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時給980円の工場バイトで生を繋ぐ60歳の悲哀

コロナウイルスに怯えながら時給980円の工場バイトで生を繋ぐ60歳の悲哀

「貧困婚強制社会」

そんな言葉を日本で見かけるようになって久しい。

ちょっとした「踏み外し」がきっかけで、
二度と這い上がることができなくなる社会。

それが今の日本なのかもしれない。

事業に失敗し家も店舗も失ったKさん(60歳・男性)もその1人。

脱サラして開業したマッサージ店の
経営が鳴かず飛ばずで、あえなく倒産。

そのまま家屋を失い、借金だけが残った。

現在は惣菜を作る工場で時給980円のバイトをし、
1Kのアパートで生活を繋いでいる。

週払いの給料で、
年収にして190万円ほど。

彼は言う。

「チャンスがあればもう一度ビジネスを学んで、
 以前失敗した起業に再チャレンジしたい」

意欲としては立派だ。

実際彼は、今もなけなしのお金で本を買って
「起業志望者」として生きている。

Q.本ではどのようなことを学ばれているのですか?

「成功哲学や流行りのビジネスについて学んでいます。
 ただ本って結構抽象的な内容が多いので、
 もっと具体的なノウハウを知るために
 ネットでいろいろ調べていますよ」

Q.具体的にはどんな起業を学んでいるのですか?

「ネットを使ったビジネスの起業を学んでいます。
 先日もちょっとした塾に入ってみました」

Q.生活に苦労されているご様子でしたが、
 塾に入るお金はあったのですか?

「支払い方法を融通していただいたので、
 私でも入ることができました、ただ・・・」

Q.ただ?

「実際にカリキュラムを見てみたのですが、
 難しそうだったので1日で辞めてしまいました」

「主催者の方は初心者向けの取り組み方や
 もともとサービスにあったサポートを活用してほしいと
 親切に言っていただいたのですが、結局1日で辞めました」

決断の速さはある意味起業家向きなのかもしれないが、
私は聞いていて「少しの違和感」を覚えた。

たった1日で挑戦を諦めてしまうような人に、
本当に起業家が務まるのだろうかと。

確かに決断の速さは重要なのかもしれない。

ただ十分な取り組みもせずに早々に撤退するのは
単に投げ出しただけなのではないかとも思ってしまうのである。

そんなKさんには起業成功以上に気がかりなことがあるという。

「例のコロナ騒動で現場がピリピリしています。
 先日も10人いるうちの1人に発熱者が出て病院に行きました。

 結局ただの風邪で済んだのですが、もしコロナだったら
 即刻工場が閉鎖されます。
 
 社員の場合はその間も給料保証があるので良いですが、
 私のようなバイトはクビにならなかったとしても
 その間の収入はゼロですからね

 こんな生活でも昨年よりは収入が増えた方なので、
 税金の支払いもありますし・・・

 早くネットで稼げるようにならないと、と思っています。」

現在60歳、今のバイトがダメになれば、
このご時世、自分の年齢での再就職はさらに難しいと、
やり取りの最後に、Kさんは静かに漏らした。

コロナ騒動で業種業界問わず不況の波に呑まれつつある今、
今回のKさんのように収入に不安を抱えたまま
生活を続けざるを得ない人が増えていくのかもしれない。

貧困強制社会。

運良く「浮上」の機会を得られた者以外には、
変わらず厳しくも酷な生活が待ち受けている。

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